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パタゴニア patagonia
 環境担当 / 篠 健司氏 SHINO, Kenji
 

  登山、サーフィン用を中心としたアウトドア・ウェアを製造、販売する企業パタゴニア。アウトドア製品を 販売する企業にとって自然はまさにビジネスの基盤であり、他の業界に比べて自然との結びつきはより直接的だ。これまでもパタゴニアはさまざまな環境への取り組みをおこなってきた。一例をあげれば、10年も前からパタゴニアのコットン製品はすべてオーガニック・コットンで作られている。環境担当を2年前から専任している篠健司氏に、遊ぶことと環境への取り組みがどのようにつながるかを訊ねた。
 
  篠氏自身がはじめて自然の魅力に触れたのは小学生のころだった。両親も東京生まれで、篠氏は〈田舎〉というものを持たなかった。しかし夏には、両親の親戚を訪ねて家族で那須の山を歩いた。田舎代わりに両親が持っていた千葉県九十九里の家へ1〜2週間の海水浴へ出かけもした。湯船に体を沈めていると、開けておいた窓からカニが這い入ってきたのを覚えているという。川ではウナギを釣り、林では虫を捕まえた。
  2006年春、篠氏は社名の由来となった南米パタゴニア(アルゼンチン)において、放牧地が自然状態に戻るプロセスを手助けする活動をおこなっている。その彼の原点となったのは、身近な自然だった。自然の大切さを知るのに、パタゴニアのような〈大〉自然へ分け入っていくことは必ずしも必要ではないと篠氏は言う。彼自身、身近な自然のなかで遊び、スポーツをしたことから、自然のしくみ、自然の大切さを学んできたのだ。


 しかしいま、自然のなかで遊ぶ危険性が強調されることや、保護目的で立ち入れない自然の多いことが、彼の気にかかっている。加えて、自然よりも魅力的な遊びがたくさんあると捉える社会の流れも感じている。「けれども自然の魅力は減っていない」と篠氏は信じている。だからこそ、アウトドア企業の環境担当として、社員が休暇中にガイドを務めたり、さまざまなプログラムで役割を果たしたりすることの重要性を認識している。自然の危険な側面を知らせながら、自然の魅力と知識を子どもたち、大人たちに伝えるプロセスを作るのだ。 

 篠氏が南米パタゴニアでそうしたように、環境問題や社会問題に直面した現場の危機感、切迫感を理解するためには、やはり現地へ入っていくことが重要になる。そうしなければ自分の身に引きつけて考えることに限界があるからだ。自然を大切に感じことも、実際に自然のなかへ入っていけばアウトドア・スポーツを通じて学ぶことができる。
  アウトドアからは生きる力、ミニマムな思考を学ぶこともできると篠氏は語っている。装備を少なくし、インパクトを少なくし、欲求を少なくする――それは増える自動車のためにさらに道路を建設していく思考、長距離輸送を発展させてコミュニティーを壊していく思考とは異なるものだ。身近な自然で遊ぶことは、もうそれだけで環境への気持ちを育てることになるのだ。

  今回の取材のためにパタゴニア鎌倉店を訪ねたとき、サーフボードを車の屋根に次々くくりつけていくパタゴニア社員の姿が見られた。戦略会議のため〈合宿〉へ出かける営業部門の社員たちだと聞かされなければ、待ちに待ったサーフトリップへ出発する様子そのものだった。パタゴニアにおいてビジネスと遊び、そして環境保護は重なり合っているのだ。

 
   
パタゴニア
http://www.patagonia.com/japan/


文・写真/小田義起 copy write & photo by Oda Yoshiki

 
 
     
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